当院では2016年5月に手術支援ロボット「ダビンチXi」を導入し、泌尿器科分野を皮切りにロボット手術が開始されました。

その後、心臓血管外科、消化器外科においても運用が始まり、2台目のダビンチXiも導入しました。

外科治療の未来を変えるとも言われるこの「ロボット手術」についてご紹介いたします。

ロボット手術とは?

手術支援ロボット「ダビンチ」を利用して行う腹腔鏡・胸腔鏡手術のこと。

ロボットの操作は専門の訓練を受けた医師が行います。

ロボット手術の特徴

  • 01
    体への負担が軽い
    切開創の比較前立腺がん手術の場合
    従来の開腹手術
    ロボット手術

    傷が小さく、術中の出血量も少ないため術後の回復も早く、患者さまの負担が軽減されます。

  • 02
    鮮明な3D視野

    術者は直接の目視(開腹手術)に比べて、より明るく、鮮明な立体映像を見ながら正確な手術を行うことができます。また、拡大表示が出来るため、精密な操作が求められる場面でも有利です。

  • 03
    広い可動域と手ブレの排除

    ダビンチの鉗子は、関節構造を持ち可動域が極めて広いため、従来の内視鏡手術用鉗子では難しかった操作も出来るようになりました。

    ダビンチの鉗子

    さらに手ブレ補正機能があり、細い血管の縫合や神経の剥離など細かい操作もより安全かつ正確に行えます。

体への負担が軽く、正確で安全な手術が可能。入院期間の短縮も望めます。

ダビンチの各ユニットについて

サージョンコンソール
いわばロボットの操縦席と言えるユニット。
執刀医は体内のカメラを通じて得られる3D映像を見ながら、手足を使って手術操作を行います。
ペイシャントカート
医師の操作を受け、実際に手術操作を行うユニット。
ダビンチXiは4本のアームを持ち、体内に挿し込まれた鉗子で切る、つまむ、縫うなどの手術手技を行います。
ビジョンカート
視覚情報を司るユニット。
術野を照らす光を調整するとともに、内視鏡カメラの映像信号を3D映像化し、サージョンコンソールに送ります。

当院の
ロボット手術の特長

最新型のダビンチXiを2台体制で運用

2台保有は国内でも限られた施設のみ。手術の待ち日数短縮を図っています。

充実の医師体制

学会が認定するロボット手術指導医(プロクター)が3名在籍しています。
他の施設で、ロボット手術を導入する際の支援も行っています。

豊富な実績

全科累計で1,900件を超える豊富な症例数を誇ります。
症例数は、医師をはじめとしたチームの熟練度や経験に伴う術後合併症の減少に影響する、施設選びの重要な指針です。

年別手術件数全科合計

年別手術件数グラフ

累計件数

前立腺がん
667
2016年〜2023年12月末
腎がん
151
2016年〜2023年12月末
結腸がん
39
2022年〜2023年12月末
胃がん
39
2019年〜2023年12月末
心臓弁膜症
398
2018年〜2023年12月末
冠動脈バイパス(グラフト採取)
211
2017年〜2023年12月末
直腸がん
251
2018年〜2023年12月末
子宮全摘術
69
2022年〜2023年12月末

当院で受けられる
ロボット手術

心臓血管外科
  • 心臓弁膜症手術
  • 冠動脈バイパス術における内胸動脈剥離
泌尿器科
  • 前立腺がん手術
  • 腎がん手術
  • 膀胱がん手術
  • 副腎腺腫手術
  • 腎盂形成術
外科
  • 直腸がん手術
  • 結腸がん手術
  • 胃がん手術
  • 肝胆膵手術
産婦人科
  • 子宮良性疾患に対する子宮全摘術
  • 仙骨膣固定術

ドクターコメント

4名しかいない日本ロボット外科学会・心臓部門「国際A級」認定を保有
副院長・心臓血管外科主任部長・低侵襲心臓手術センター長
中村 喜次
profile
  • 心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医・修練指導者
  • ロボット心臓手術関連学会協議会ロボット心臓手術プロクター(手術指導医)認定医
  • 日本ロボット外科学会 評議員・Robo-Doc国際A級/国内A級 ほか

心臓分野におけるロボット手術のメリットは?

ダビンチを使った手術の大きなメリットのひとつ目は「よく見える」ことです。
これは術者の手元の正確性はもちろん、鮮明な映像を助手の医師や看護師、臨床工学技士などの共に手術を行うチームのメンバーと共有が図れるという面でも恩恵があります。チームとしての知見・経験値の蓄積は治療全体の質・精度・安全性の向上につながっています。

ふたつ目は、4本の腕(内視鏡と3つのアーム)を持つダビンチの高い操作性です。各アームの先端には多方向に手首のようにスムーズに動かせる関節があるため、狭い心臓内でも自由度の高い正確な施術が行えます。

ロボット手術の適応は?

具体的な手術としては、心臓弁膜症(僧帽弁・三尖弁形成術)のほか、低侵襲冠動脈バイパス手術(MIDCAB)におけるグラフト(内胸動脈)の剥離にもダビンチを用いています。これらの手術は、もちろんダビンチ無しではできないというわけではありません。しかし、精密なロボットの動きを借りることで、安全かつ精度の高い手術がより短時間で可能になります。さらには患者様の体の負担がより軽く済みます。そのため、当科での心臓弁形成術においてはロボット手術が第一の選択肢となっています。

ダビンチの運用・病院全体の治療体制は?

ロボット手術に限ったことではありませんが、心臓の手術を受ける患者様は高血圧や糖尿病などの持病をお持ちの方が多くいらっしゃいます。当院は手術入院時における持病の管理や術後合併症など、あらゆる可能性に備えて各科の専門医が常にバックアップする万全の体制を整えています。それらは心臓の専門病院ではなく、総合病院である当院ならではの、大きな強みといえます。

ダビンチを駆使して高難易度手術をより安全・正確に
外科部長
小林 昭広
profile
  • 日本外科学会専門医・指導医
  • 日本大腸肛門病学会専門医・指導医
  • 日本内視鏡外科学会 ロボット支援手術プロクター認定(消化器・一般外科)
  • 日本ロボット外科学会Robo-Doc国内A級 ほか

直腸がんロボット手術のメリットは?

直腸がんの手術は、狭い骨盤の中での手術操作が求められるため、ダビンチの極めて可動域が広い関節構造を持つアームは非常に有効です。特に骨盤の狭い男性や肥満気味な方の場合、直線的な鉗子しか使えない腹腔鏡手術では「見えているけど届かない」ということも時にあり、困難を極めていました。対して、ダビンチはアームの関節構造により思い通りの動作ができるため、よりスムーズに手術が行えるのです。

直腸がん手術では、術中にトラブルがあった際、開腹手術に切替える場合があります。しかし、臨床試験のデータにおいて、ロボット手術は腹腔鏡手術に比べて開腹移行率がやや低いという結果があり、つまりは難しい症例ほどロボット手術のメリットが大きくなる可能性が高いといえます。※当院では腹腔鏡・ロボット手術ともに、開腹に移行した例はございません。

直腸がんに関しては、ダビンチにより手術時間が大幅に短縮するわけではありませんが、手技の正確性においては確実に向上しているといえます。また、がんの進行具合によりますが、肛門の温存率も腹腔鏡手術と比べて高いというデータもあり、術後の患者様のQOL(生活の質)改善にもつながるかと思います。

ロボット手術の今後の展望は?

手術の内容によっては使用するデバイス(機器)がまだダビンチに導入されていないという理由から従来の腹腔鏡手術を選択、あるいは組み合わせて行うケースもあります。しかし、今後デバイスが拡充されれば、ダビンチが活躍する場面はさらに増えていくことでしょう。

また次の取り組みとして、ダビンチによる胃がん手術も実施しています。胃がん手術には膵液漏などの合併症がありますが、ダビンチによって、それらの合併症リスクを減らすことができます。

アメリカではすでにダビンチによるヘルニアや結腸がん手術も始まっています。近い将来、日本でも多様な外科治療においてロボット手術の保険適用が認められれば、スタンダードな治療として、多くの方がその恩恵を得られるようになると思います。

迅速・精緻なロボット手術で術後の機能回復も好成績
泌尿器科部長
羽田 圭佑
profile
  • 日本泌尿器科学会 専門医・指導医
  • 日本泌尿器内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医・泌尿器ロボット支援手術プロクター(認定医)
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医(泌尿器科領域)
  • 日本がん治療認定医機構 認定医
  • 日本臨床腎移植学会 腎移植認定医

泌尿器分野におけるロボット手術のメリットは?

泌尿器分野では、前立腺がん、膀胱がん、腎がんでロボット手術を行っています。泌尿器は、臓器が入り組んだ体内の深い場所にあります。そのため、従来の手術は視野が限られた状況で長い鉗子を用いて行っており、手元の操作・コントロールにも神経を使うため、相対的に時間もかかっていました。

それに対し、ロボット手術(ダビンチXi)は、3Dのカメラが搭載されており、小さな切開や病変を立体視することができ、加えて多関節のアームによって非常に緻密な手技が安全かつ正確、迅速に行うことが可能となっています。
従来の手術と比べて、手術時間が短縮できることはもちろん、低侵襲で出血量(輸血量)が抑えられることも大きなメリットといえます。もちろん、在院日数も短いため早期の社会復帰がのぞめます。

術後の機能回復については?

前立腺がんの切除においては、患者様のQOL(生活の質)にかかわる排尿や性機能を可能な限り温存することが求められます。そこでも精緻な操作が可能なロボット手術は有効で、術後の尿失禁からの回復期間や性機能の回復率においても開腹手術・腹腔鏡下手術に比べて優位という結果が出ています。

このように多くの利点がある泌尿器分野のロボット手術ですが、システムを操作する医師にも専門的な技術と経験が求められるため、これまでの手術の件数・実績は病院選択のひとつの目安となるでしょう。

また、泌尿器のがんは比較的に高齢の方に多く、他の疾患を併発しているケースも多くあります。当院は心臓血管外科、循環器内科、消化器内科、外科といった他の診療科と密に連携した治療を行っており、ロボット手術をはじめ、あらゆるケースに対応できる体制が整っていることも強みといえます。

正確、安全な手術で女性のQOL改善をめざす
産婦人科部長
幸本 康雄
profile
  • 日本産科婦人科学会 専門医・指導医
  • 日本産科婦人科内視鏡学会 評議員・技術認定医
  • 日本内視鏡外科学会 技術認定医(産婦人科領域)
  • 日本女性骨盤底医学会 専門医
  • 千葉県医師会 母体保護法指定医

婦人科分野におけるロボット手術のメリットとデメリットは?

子宮全摘術では、膀胱の剥離や尿管の同定、血管の処理など、複数の非常に繊細な手術操作が必要となります。それらの操作において、3Dカメラにより拡大された術野画像が得られ、可動域が広い関節構造を持つアームが繊細な手技を可能とするロボット手術は、安全性と正確性という点で大きなメリットがあります。

デメリットとしては、従来の腹腔鏡手術に対し、手術時間が長くなる傾向があります。

今後の展望を教えてください

子宮全摘術に続いて、2023年より「ロボット支援下仙骨膣固定術(RSC)」を開始しました。また、将来的にはチーム人員を拡充し、悪性腫瘍(子宮体がん)手術にも適応を広げて行きたいと考えています。

手術費用について

当院で実施しているロボット手術は全て健康保険が適用となります。
また、高額療養費制度を利用可能ですので、より負担額を軽減することが可能です。

ロボット手術に係る入院診療費の目安

前立腺がん、入院11日の場合
10割
1,700,000
3割
510,000
1割
170,000

高額療養費制度を利用した自己負担の目安

前立腺がん、入院11日の場合、70歳以上/所得一般の場合
75,000
  • ご年齢、所得に応じて自己負担額は増減があります。
  • 入院期間が月を跨ぐ場合は金額が変更になる場合があります。
  • 診断書や病衣代など保険適用外の費用は別途です。

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